【癌(がん)の治療】放射線治療 | 医療事故 医療過誤 / 弁護士法人ALG&Associates

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放射線治療

がんの治療 放射線治療

延命策ないし緩和治療

がん治療における放射線療法は、一部のがんを除き、術後の補助療法または根治を期待できない症例の延命策ないし緩和治療として位置づけられているというのが現状だと思われます。

そして、多くの場合、放射線療法が単独で採用される場合は少なく、化学療法と併用されるのが一般的です。

言うまでもなく、放射線療法には放射線照射による被爆の問題がありますが、それ以外にも医療機関の責任を問う上で難しい課題がいくつかあります。

第一に、そもそもがん治療のために放射線が照射されている点です。

前述したように、術後の補助療法として実施される場合はともかく、放射線治療は緩和治療や延命策としてなされることも多く、このようにがんの根治が難しい局面でなされる放射線療法の場合には、ある程度のリスクや合併症も許容されやすいということです。

第二に、放射線療法といえども、がん細胞だけを正確に狙い撃ちすることは技術的に容易ではなく、少なからず正常細胞も巻き込んでしまう点です。

正常細胞を巻き込んだ場合の合併症リスクを過度に恐れると、がん細胞に対する十分な照射ができず、治療効果を上げられません。

第三に、放射線療法によって生じ得る合併症のリスクは照射部位によっても異なりますし、耐容線量も標準的な基準はあるものの個人差も少なくないことから、医療裁判において高度な医学論争に発展しやすいという事情も存在します。

放射線療法と裁判例

放射線療法による医療過誤訴訟として、参考になる原告勝訴の裁判例がありますので紹介したいと思います(東京地判平成7年9月22日)。

この事例は、患者が腺様嚢胞がんと診断され、かつ手術適応がない事例でした。

したがって、この事例では根治を目的とした放射線療法がなされたわけではなく、あくまでも緩和治療が目的でした。

そして、この事例ではがんの浸潤により、気道閉塞による窒息死の可能性があったことから、この窒息死を回避するために放射線療法が実施されたという事情がありました。

この事案は、放射線療法の結果、放射線脊髄症を発症し患者を死に至らしめたという事案です。

放射線脊髄症は、一旦発症すると有効な治療方法がなく、生命にかかわる重度の障害となり、ほとんどの場合死に至るという極めて重篤な合併症です。

しかし、この事案では気道閉塞による窒息死を回避するという極めて緊急性の高い治療目的があったことから、実際に、医療機関側からは放射線脊髄症を発症させてしまったことはやむを得なかったという反論がなされています。

では、どうして原告がこの事案で勝訴できたのでしょうか。判例は次のように述べました。

「その耐容線量を超える時点までには、既に病巣部位に対してある程度の放射線が照射されており呼吸困難も一応治まっていると推認できるし、…被告病院が斜入対向四門照射の方法を採用し、これを実施することは技術的に可能であることからすると、最後まで前後対向二門照射の方法で行う必要はなく、遅くとも耐容線量を超える時点では、前後対向二門照射以外の照射方法を採用すべきであった」

としています。

ここで専門的な話になりますが、前後対向二門照射は、気道閉塞による窒息死を回避する照射方法としては優れていたのですが、耐容線量を超えると放射線脊髄症を発症させる危険も高い照射方法だったのです。

しかし、照射がある程度功を奏し、気道閉塞の危険性が減少したのであれば、耐容線量を超える時点までに他の照射方法に変更することもできたはずだとしているわけです。

そして、放射線脊髄症を発生させるリスクの少ない斜入対向四門照射は被告病院においても技術的に可能であったとしています。

このように、やや込み入った医学論争を経て原告勝訴となったわけです。

しかし、この判例では、損害額を定めるにあたって、興味深い過失相殺がなされています。

もちろん、患者側に具体的な過失があったわけではありません。

裁判所は、本件のがんに対する放射線治療の完治率が二割程度であったことから、患者が完治して通常の生活を営めることを前提に損害額を定めるのはかえって公平を失するとして過失相殺を行い、相当程度損害額を減額したのです。

まさにここに、根治が難しいがん治療の特殊性が現れていると思われます。

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