【癌(がん)の治療】抗がん剤 | 医療事故 医療過誤 / 弁護士法人ALG&Associates

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抗がん剤

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医師の責任追及が最も難しい

がん治療に関する医療過誤の裁判で、医師の責任追及が最も難しいのは、おそらく抗がん剤に関連するものではないかと思います。

抗がん剤と聞けば、医療関係者でなくても思い浮かぶのは副作用です。嘔吐、下痢、脱毛はもとより、白血球や血小板の著しい減少など、重篤な副作用を引き起こすこともまれではありません。

副作用が強すぎて途中で化学療法が中止されることもあります。

分子標的薬であるイレッサの副作用で間質性肺炎を発症して死亡するケースが全国で起こり、イレッサ訴訟が続発したこともありましたが、そもそもその背景には分子標的薬は抗がん剤と異なり副作用が少ないという前評判があったからです。

言い換えれば、そのくらい「抗がん剤と言えば強い副作用」というのが常識となっており、それだけ毒性が強い薬剤なわけです。

他方で、そんなに副作用が強いのであればがんに効いてもらわないと困るわけですが、現実は根治をあまり期待できないのが化学療法の特色です。

いわば、ハイリスク・ローリターンという割に合わない治療方法なんです。

それなのに化学療法ががん治療の臨床現場で標準的な治療となっているのは、とりわけ末期がんにおいては、それ以外に適切な治療方法がないからです。

加えて、抗がん剤治療の現場は、治療しながら臨床データを積み上げているというのが実際で、例えば、一般的に抗がん剤に対する感受性が弱い(すなわち、あまり効かない)と言われている腺がんでさえ、医療現場では抗がん剤が投与されています。

つまり、治療しながら実験しているという側面があるわけです。

抗がん剤と裁判例

抗がん剤に関する医療裁判のほとんどが、重篤な副作用により患者が死亡したというものです。

しかし、前述したように、抗がん剤というのは、そもそもハイリスク・ローリターンな薬剤です。

したがって、医師の過失を立証するのにはかなり高いハードルがあると言えます。

まず、原告敗訴の事例を紹介します(東京地判平成9年4月25日)。

この事件は、子宮がんの患者に対して、アクチノマイシンDという抗がん剤を投与したところ、その約40日後に血小板減少症を原因とする出血性ショックで患者を死に至らしめたというものです。

この抗がん剤は一般的に副作用が強いとされていた一方で、患者が罹患していた子宮がんは明細胞がんといって抗がん剤に対する感受性が低いとされているタイプのがんでした。

ところが、この明細胞がんに対して、いまだ確立された化学療法というのがなく、治療の難しいがんでした。

確かに、副作用は強いのですが、かといってほかに適切な治療方法があったのかというとそういうわけではありませんでした。

また、担当医師も血液検査で白血球数や血小板数の減少知るや否や、直ちに輸血処置を取るなど、副作用に対する一応の処置を取っていました。

このような事情から、医師の過失は否定され原告敗訴となりました。

これに対し、原告勝訴の事案でけっこう有名な判例があるのですが、かなり特殊です(さいたま地判平成16年3月24日)。

この事件は、滑膜肉腫という悪性腫瘍に対し三種類の抗がん剤を併用したVAC療法を実施したところ、そのわずか6日後に発熱、白血球・血小板の減少、全身倦怠感、歩行困難などの副作用が出たうえ、その2日後には自発呼吸が困難となり、その翌日に患者が急死してしまったというものです。抗がん剤投与の開始からわずか10日後の急死です。

なぜこんなことが起こってしまったのかというと、担当医師のプロトコールの誤読でした。プロトコールに1週間当たりの投与量とあるのを1日当たりの投与量と読み間違えて投与計画を立ててしまったのです。

1週間で投与すべき量の抗がん剤を毎日投与してしまったのだから大変です。このような事例は患者が勝訴しないとおかしいと思います。

いずれにしてもこの事例はかなり異例で、抗がん剤の事案で原告が勝訴するのはかなり難しいと言えそうです。

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