【癌(がん)の治療】説明義務違反 | 医療事故 医療過誤 / 弁護士法人ALG&Associates

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説明義務違反

がんの治療 説明義務違反

治療方法の選択の幅

がん治療は、日進月歩の勢いで進歩し、治療方法の選択の幅も広がっています。

その進歩の勢いは、外科手術の手技、内視鏡、放射線治療、抗がん剤・分子標的薬などの化学療法にとどまらず、乳がんの乳房温存術・直腸がんの肛門括約筋温存術など患者のQOLに配慮した手技まで、多方面に広がっています。

そればかりか、生体への侵襲性も少ないと言われている免疫療法の研究も進んでおり、一部の医療機関では既に臨床の現場で試されています。

今後、この免疫療法ががん治療の標準治療となる日もそう遠くはないでしょう。

患者側としては、数多い選択肢の中から自分自身で納得できる治療方法を選択したいものです。

ところが、これらの先端医療が必ずしも全ての医療施設で受けられるとは限りません。

また、主治医から各治療方法のメリット・デメリットが正確に示されたうえで患者側が治療方法を選択しているとは必ずしも言えないのが現状です。

紛争の契機

がん治療においては、侵襲性の程度、合併症のリスク、根治の可能性、薬剤等の副作用の内容・程度、QOLに影響する手技の存否など、患者が治療方法を選択するに際して、数多くの関心事項があります。

また、どの程度の先進医療を提供できるかどうかは医療施設によってかなり差があるというのが現状で、どこの医療施設で治療を受けるかも患者の満足度に大きな影響を与えます。

これらの情報が適切に開示されないまま医療行為が行われると、後に患者にとってより好ましい治療方法が存在したことが分かったときに紛争になります。

特に現代社会はインターネット等による情報収集が容易なので、医療行為がなされた後で患者が自分にとってより好ましい治療方法を見つけるとかなり深刻な紛争に発展します。

また、事態を複雑にするのは、治療行為の優劣に一定程度患者側の主観的価値観が入る点です。

例えば、直腸がんや肛門管がんのケースで、手術をすれば根治性は高まるが人工肛門の創設を余儀なくされるとします。

他方で放射線・抗がん剤の併用療法を選択すれば根治の可能性は下がるが人工肛門は不要になるとしましょう。

このような事態に直面した患者はどちらを選択するでしょうか。

生命を重視すれば、人工肛門を余儀なくされても外科的切除を希望するはずですが、QOLが著しく低下することを嫌って、生命の危険を冒してでも放射線と化学療法を選択する患者も決して少なくないのです。

このことからも分かるように、医療機関としては、複数の治療方法のメリット・デメリットを適切に開示し、患者自身に治療方法を選択させることが重要であると言えます。

説明義務違反の裁判例

説明義務違反との関係で、乳房温存療法に関する最高裁判例を紹介します(最判平成17年11月27日)。

この判例の事件当時は、まだ乳房温存療法が未確立療法とされている時代でした。

つまり、乳がんに対する治療としてはいまだ乳房切除術が主流だった時代だったわけです。そんな時代であっても、最高裁は興味深いことを判示しています。

まず、最高裁は、

「一般的には、実施予定の療法は医療水準として確立したもので、他の療法が医療水準として未確立のものである場合には、医師は後者について常に説明義務を負うわけではない」

としたうえで、未確立の療法であっても、

「当該療法が少なからぬ医療機関において実施されており、相当数の実施例があり、これを実施した医師の間で積極的な評価もされているもの」

については、

「患者が当該療法の適応である可能性があり、患者が当該療法の自己への適応の有無、実施可能性について強い関心を示していることを医師が知った場合」

などにおいては、

「医師の知っている範囲で、当該療法の内容、適応可能性やそれを受けた場合の利害得失、当該療法を実施している医療機関の名称や所在などを説明すべき義務がある」

としました。

そして、乳がんという疾患の特殊性について、

「乳房を失わせることは…外観上の変貌による精神面・心理面への著しい影響をもたらすものであって、患者自身の生き方や人生の根幹に関係する生活の質にもかかわるものであるから、他の療法として乳房温存療法について説明すべき要請は一層強まる」

としています。

結論として、この事件では最高裁は医師の説明義務違反を認めました。

未確立の医療行為であっても、一定の要件の下で医師の説明義務を肯定した注目すべき判例で参考になります。

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