【解決事例】集団検診における乳癌の見落し「1000万円で和解が成立」

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解決事例.1 集団検診における乳癌の見落し

【事案の概要】

市の集団検診でマンモグラフィーによる乳癌検診を受けたところ、異常なしとの検査結果でした。

その約1年後、体調不良を訴え、市立病院でマンモグラフィー、超音波検査等によって乳癌が発見されました。

患者はその約10ヶ月後に死亡しております。

医療調査における協力医の意見によると、集団検診におけるマンモグラフィーに、カテゴリー3(良性。但し、悪性の疑いを否定できない)に該当する異常所見あり、もっとも仮に見落しがなかったとしても、生命予後が変わったか否かは不明ということでした。

癌の見落しについては、協力医からの積極的意見が得られましたが、因果関係については消極的意見だったため、医師の意見書なしで提訴することになりました。

【解決のポイント】

この裁判では、医師の意見書が確保できなかったので、医学文献のみで医療機関の過失・因果関係を立証しなければなりませんでした。

集団検診における癌の見落しは、単純X線撮影の肺癌見落しが多いです。

しかも、集団検診の胸部X線受診者は数が多く、一般臨床医(呼吸器の専門医ではない)が読影にあたっていることから、ある程度の見落しもやむを得ないとする裁判例が多いのです。

被告は、これらの肺癌見落し裁判例を引用し、過失を争ってきました。

もっとも、胸部の単純X線画像では、心臓、大動脈、主気管支等の縦隔や血管、骨、気管支に癌が隠れやすく見落としやすいという解剖学的特徴がある。

そこで、本件においては、集団検診といえども、乳癌検診の受診者は数が限られ、マンモグラフィー読影認定医が読影に当たること、乳房は乳腺組織と脂肪組織からなる単純構造となっており、胸部ほど複雑な解剖学的特徴を持たないこと等を中心に議論を展開しました。

具体的には、胸部単純X線の正常所見、異常所見、マンモグラフィーの正常所見、異常所見を医学文献で比較対照しながら、本件における医療機関側の過失の立証活動を行ったのです。

また、因果関係については、本件が乳頭腺管癌であり、しかもエストロゲン、プロゲステロン高発現型の乳癌であったことから、乳癌の中でも最も予後が良い癌であることを医学文献で説明し、集団検診時の所見もカテゴリー3にすぎず、必ずしも悪性所見ではなかったことから救命可能性が高かったことを論じました。

結果として、協力医の意見書なしで、1000万円の高額和解となりました。

医療事業部 担当弁護士の解決結果に対するコメント

医師は、法律家とは違って、因果関係、すなわち、仮に適切な医療行為がなされていたら、結果(予後)は変わったか否かを科学的に考えます。

癌を見落とした時点における正確な病期やリンパ節転移の有無などは、精密検査をしていない以上、明らかにできません。

このような時に、医師は、「癌を見落としていなかったら予後は変わりましたよ」とはなかなか言ってくれないのです。

しかし、だからといって、因果関係を否定するかのような意見書を裁判で使用すると、医療機関側の弁護士からうまく利用され、却って議論の混乱を招くことになります。

協力医の存在は大変ありがたいものですが、それに依存することなく、医療を専門分野とする弁護士としては、日頃から医学文献に精通し、的確に分析できる能力を養っておく必要があることを痛感した一例でした。


文責:弁護士法人ALG&Associates
医療事業部長

代表社員・弁護士 金﨑浩之

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