【解決事例】腹部X線写真の悪性リンパ腫の見落し「3500万円で和解が成立」

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解決事例.3 腹部X線写真の悪性リンパ腫の見落し

【事案の概要】

胆石の治療方針を決めるために撮影された腹部X線写真に非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫の一種)が疑われる異常所見が描写っていたところ、これを見落としました。

胆石の治療は無事終了しましたが、後日、非ホジキンリンパ腫が発見された時には既に手遅れとなり、患者は死亡しました。

協力医の見解は、主治医が読影した腹部X線写真には、悪性リンパ腫の所見がはっきりと認められ、しかも腫瘍径は8㎝大に及ぶものでした。

要するに、病変の拾い上げとしては容易な所見ということだったのです。

協力医から肯定的な意見書が得られたので、提訴に踏み切りました。

【解決のポイント】

患者が罹患した非ホジキンリンパ腫は、悪性度は中程度のものとされていたが、放射線化学療法で根治が見込めるタイプの悪性腫瘍であったため、因果関係は大きな争点にはなりませんでした。

また、当該腹部X線写真にはっきりと悪性リンパ腫の所見が認められる点についても、被告も争ってきませんでした。

この事例での中心的な論点は、検査目的との関係で、異常所見の見落しに過失があるか否かという点です。

素人の方たちによくある誤解に、「画像にはっきり写っているのに見落としているのだから、過失(落ち度)があるのは当然ではないか」というご意見です。

検査目的が何であれ、画像に写っている以上見えるはずだから、見落とすべきではないと考えたい気持ちも分かります。

しかし、実際の画像読影はそれほど簡単なものではなく、通常は、検査目的(言い換えれば、読影目的)に大きく影響を受けざるを得ないのです。

そういうことなので、当然、被告は、本件画像を撮影した理由が、胆石の治療方針を決定する際の資料にするためであり、腫瘍病変のスクリーニングを目的とした検査でなかった点を強調し、見落しの過失はないとの主張を展開してきました。

これは、医療機関側としては当然の反論です。

これに対して、患者側としては、当該画像に認められる異常所見の部位、サイズ等の特徴を強調し、癌のスクリーニング検査ではなかったとはいえ、異常所見の指摘は容易であり、見落しに過失がある点を主張して反論しました。

決め手は、検査目的が癌のスクリーニングではなかったことを考慮してもなお、異常陰影が相当大きく、病変の拾い上げは容易であったという点です。

このような原告の立証活動が奏功し、裁判官から和解の打診があり、3500万円で和解となりました。

しかし、もし画像に写っていた所見が小さかったとか、腹腔内臓器と一部重なって見えにくかったという事情があったら、このような高額和解はできなかったのではないかと思います。

医療事業部 担当弁護士の解決結果に対するコメント

上記に述べたとおり、癌を疑うべき異常所見の指摘は、その医師の専門分野及び検査目的による影響を受けます。

本事例では、胆石の治療方針を決定するために画像撮影がオーダーされており、癌のスクリーニング目的ではありませんでした。

したがって、異常所見の指摘の精度は下がらざるを得ないのです。

実は、癌の見落しに関する医療紛争の多くは、このタイプに属します。

つまり、主治医が専門外であるとか、また検査目的が癌のスクリーニングではない場合に見落しが起こり紛争に発展していくのです。

そのようなケースの主張・立証の大きなポイントは、主治医の専門外あるいは癌のスクリーニング目的ではない検査である事情を考慮してもなお、指摘が容易な異常所見であることまで具体的に主張・立証していくことです。

その意味では、協力医が見落しを指摘してくれているだけでは足りず、患者側の主張・立証のハードルが高くなっていることに注意する必要があります。

本事例の場合は、悪性リンパ腫を疑える異常陰影が相当大きく、この点が高額和解の決め手となりました。

もし異常陰影が小さく、または臓器の影に隠れるなどして発見を妨げる事情があったら、このような高額な和解は困難だったろうし、棄却判決もあり得た事案だったと思います。


文責:弁護士法人ALG&Associates
医療事業部長

代表社員・弁護士 金﨑浩之

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