【解決事例】敗血症の見落し「4240万円で和解が成立」

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解決事例.4 敗血症の見落し

【事案の概要】

前立腺生検の翌日から38℃以上の高熱がで、SIRS基準を満たしていましたが、医療機関は、解熱剤(ボルタレン)を投与し、生検から2日後に予定通り退院させたところ、その日のうちにショック状態になり、敗血症が悪化し、生検3日後に死亡したという事案です。

本件においては、病理解剖が実施され、医師による説明会もなされましたが、その際、①熱があったのは生検後の一過性の症状であり、経過観察をするのが通常で、退院時において解熱していたことから、退院の判断も問題ない。②インフルエンザにも罹患していたこと、糖尿病で免疫力が低下していたこと等から、急激に悪化したのは患者側の要因で、インフルエンザ、敗血症で死亡することは予期できなかったという説明が病院側からなされたのです。

本件においては、説明会では提示されなかった病理解剖の所見等を入手する目的で、証拠保全の手続きを踏み、示談交渉を試みました。

訴訟提起せず、あえて示談交渉を選択したのは、敗血症の見落しに関しては証拠上立証しやすいと考えられたことから、医療機関側としては誠実に対応してくれるはずだという読みがあったからです。

ところが、示談交渉の結論としては、説明会通りの回答がなされ、病院側からは、見舞金程度(数十万円)の解決金の提案しかなされなかったのです。

また、依頼者からの真相解明の意向、謝罪の要求も強かったことから、最終的に訴訟に踏み切りました。

訴訟の際には、協力医の意見を参考にしたものの、意見書までは利用しませんでした。

本件では、示談交渉のために、依頼者もかなりの費用を費やしていたことと、意見書の作成にはけっこうお金がかかりますので、できるだけ依頼者の負担を減らしたかったからです。

和解がまとまらず、判決ということになれば、意見書を提出する予定でした。

【解決のポイント】

当初は、ほかの法律事務所の弁護士さんが受任しており、インフルエンザ脳症にボルタレンを使用したことにより、ボルタレンショックにより死亡したと考えられていたようです。

ところが、我々が検討したところ、診療記録上敗血症が死因となっていたことから、インフルエンザ以外に細菌が検出されているはずであり、「生検による感染みぎや→敗血症→敗血症性ショック→死亡」という機序であると考え、SIRS基準からどのタイミングで抗菌薬投与をすべきかを検討したのです。

おそらく、最初に受任していた弁護士さんが、あまり医療裁判に慣れておらず、カルテを十分に読み込めていなかったのだと思われます。

そして、協力医と面談するまでに、敗血症に関する文献を多数読んでいたこともあり(敗血症に関連する裁判は実に多いのです)、訴訟では、文献による立証で十分であると考えました。

訴訟開始段階では、ガイドライン等の文献を中心に立証活動をしました。

被告も、抗菌薬を投与する義務はないこと(特に、生検後の一過性の発熱、前立腺炎の経過観察で足りる、退院時解熱できていたので問題ない)、因果関係がないことの主張が繰り返されました。

そこで、裁判所からの訴訟指揮もあり、専門委員を利用することになったのです。

そして、専門委員の見解を踏まえて、和解をするか、その後鑑定をするかを決定するという方針になりました。

幸い、専門委員により、有責の意見が出たことから、和解の流れとなりました。

最終的には、4245万6228円の請求金額に対して、4240万円で和解が成立したので、ほぼこちらの請求額を受け入れる形の和解となったのです。

原告側が当初からこだわっていた謝罪文の要求については、被告が地方公共団体であることが影響したのか、最終的にはかなわず、和解条項の前文で、「原告ら及び被告は、原告らの主張する注意義務違反を認める旨の専門委員の意見を踏まえ、以下のとおり和解する。」記載をすることで和解しました。

原告側はSIRS基準を満たしており、前立腺生検時に感染した可能性があり、抗菌薬の投与が必要と主張したのに対し、被告側は生検後の一過性の発熱、前立腺炎の経過観察で足りると主張が真っ向から対立しましたが、専門委員の関与により、スムーズに和解による解決となりました。

専門委員による判断の場合、一般的な医学的知見にとどまり、判決まで望む場合、証拠化できないという難点があるものの、和解の判断には十分使えます。

ここで指摘しておきたいことは、裁判官といえども医療問題に関しては、かなり素人だということです。

我々にとっては勝ち筋に見える事件であっても、裁判官にとっては違う風景に見えているのです。

やはり、専門委員の関与や、場合によっては鑑定に移行して決着をつける必要があるということです。

医療事業部 担当弁護士の解決結果に対するコメント

依頼者の方は、当初から真相解明と病院からの謝罪を強く求めていました。

依頼者の希望は、金銭賠償よりも謝罪でした。

なので、依頼者は病院が支払うべき賠償額に関しては大きく譲歩できるということでしたので、示談交渉による解決に馴染むのではないかと考えたのです。

具体的には、2000万円程度の示談金でまとまるのではないかという予想をしていました。

また、証拠上もこちらに有利でしたので、病院側も誠実に対応してくれるはずだという期待もありました。

ところが、その期待は見事に裏切られました。

病院側は、謝罪はおろか、損害賠償を支払う用意はなく、数十万円程度のお見舞い金しか提案してこなかったからです。

訴訟に移行し、専門委員が入ったらいっきに高額和解に進んでいったことからも分かるように、本件は、患者側にとってかなり有利な事案でした。

そのような事案であるにもかかわらず、示談交渉だとお見舞い金程度の提案しか出てこないのです。

あらためて、医療紛争を話し合いで解決することの難しさを痛感しました。


文責:弁護士法人ALG&Associates
医療事業部長

代表社員・弁護士 金﨑浩之

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