【解決事例】腹膜炎の発見の遅れ「300万円で和解が成立」

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解決事例.6 腹膜炎の発見の遅れ

【事案の概要】

大腸の手術後、縫合不全により、腹膜炎となり、発見が遅れ、敗血症となり死亡した事案です。

また、司法解剖がなされ、警察が捜査している最中の事案でもありました。

医療機関による説明会も実施されましたが、医師らの対応に何ら問題はなかったとの説明だったそうです。

説明会が実施された後に、我々が調査案件として受任しました。

【解決のポイント】

2名の協力医に意見を窺ったところ、1名は無責(有責の立証が難しい)、1名は有責(因果関係について立証困難)との意見であり、医師により意見が分かれました。

また、我々が受任した段階で、すでに病院側には代理人弁護士がついており、交渉の可能性も試みましたが、刑事事件との関係で、現段階では示談は難しいとなり、訴訟提起することとなったものです。

訴訟提起に当たっては、協力医の意見書も付けました。

注意義務としては、①大腸の手術方法について②腹膜炎をもっと早期に疑えたこと等を主張しました。

これに対して、被告は、①手術方法については、実施された手術もガイドラインに記載されており、注意義務違反とはいえないこと、②発熱所見等に関して、カテーテル感染を疑い、腹膜炎まで疑えないと主張して争ってきました。

まず、①の反論については当初から予想されるものでしたが、②の注意義務との関係(下腸間膜動脈根部切離すれば虚血する可能性があり、壊死し、腹膜炎を合併する可能性が高いこと)、死亡との因果関係との関係(下腸間膜動脈根部切離により虚血→縫合不全→腹膜炎→敗血症→死亡と、②の注意義務との因果関係よりも認められやすいこと)で反論しました。

②については、カテーテル感染の可能性も否定できないが、手術の方法から腹膜炎になる可能性が高いこと、腹膜炎の症状も複数あることから、腹膜炎の可能性を排除することはできないと文献等で反論しました。

なお、腹膜炎を早期に発見したとしても、緊急手術は避けられず、予後がどこまで変わるか立証できないという状態でした。

また、この点に関して、相当程度の可能性であることは、警察官から情報を得ており、死亡との因果関係まで立証することは困難な事案でもありました。

そこで、主張の争点整理でできた段階で、和解の可能性を探り、300万円で和解しました。

この事例は、因果関係の立証が困難な事例だったので、過失の立証に全力を注ぎ、期待権侵害による賠償を目標にしました。

もし医療機関側の過失の立証に失敗していたら、和解していたとしても、お見舞い金程度(数十万円)の和解金額にしかならなかったと思います。

医療事業部 担当弁護士の解決結果に対するコメント

医療事件において、過失が認められるのに、死亡との間に高度の蓋然性があることが立証できないケースがあることはよくあることです。

本件においては、司法解剖が実施されており、死亡との間に高度の蓋然性がないことが分かっていたため、相当程度の可能性を前提とした和解がしやすい事件でありました。

他方で、遺族としては、過失があるにもかかわらず、なぜ、死亡までの責任が問えないのかは腑に落ちないことはよくあります。

この場面で、判決まで進み、敗訴になることも十分想定されます。

そういう意味で、本件で和解ができたことは代理人としては一定の解決に導けたと考えております。

ところで、昭和50年度のルンバールショック事件最高裁判決以来の「死亡との間に高度の蓋然性を要求する判例理論」には大きな疑問があります。

この判例理論に従うと、「もし医療機関が適切な医療行為を実施していれば、十中八、九患者を救命できた」ことを証明する必要があることになります。

しかしながら、十中八、九患者を救命できる場合だけ医療行為がなされるわけではなく、例えば、救命率が50%であっても医療行為は行われるはずです。

このような場合に、救命率が80%以上でなかったからといって、因果関係がないと判断され、医療機関側の責任が否定されるのは不合理だと思います。

50%の救命率を奪ったのであるから、その限度で患者の死亡に影響を与えているはずなので、損害の5割は医療機関側に負担させるのが公平というものです。

この因果関係論の問題は、医療裁判の分野で残された課題と言えるでしょう。


文責:弁護士法人ALG&Associates
医療事業部長

代表社員・弁護士 金﨑浩之

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