【解決事例】血液抗凝固薬投与による出血状態に対する不作為「450万円で和解」

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解決事例.10 血液抗凝固薬投与による出血状態に対する不作為

【事案の概要】

Dさんは、高齢ということもあり、不整脈のために、血液抗凝固薬であるワーファリンを常用していました。

ある日、息苦しさを感じたため、病院で診てもらったところ、軽い心不全と診断され、入院することとなりました。

その後、症状が落ち着いたことから、いったん退院したものの、また容態が悪くなり、再入院しました。

ところが、再入院後、病院では、ワーファリン投与を中止しただけで、その他の有意な処置が殆どなされないまま、約10日後にDさんは死亡してしまったのです。

遺族は、Dさんが90歳と高齢であったため、救命措置もなされず、放置に近い状態で殺されたとの思いが強く、証拠保全により、情報を全て押さえた上で、訴訟提起に踏み切りました。

【解決のポイント】

ワーファリンは、血栓が生ずるのを予防する目的の薬剤ですが、過小投与だと血栓予防効果が得られず、過剰投与だと出血の危険が高くなるため、厳格な投与量管理が必要とされています。

その管理の指標として用いられるのがPT-INR(国際標準化プロトロンビン時間)であり、この数値が1.6~2.6の間に収まるように、ワーファリン投与量を調整しなければなりません。

ところが、Dさんが再入院した際のPT-INRは、7.9という異常高値を示していました。

病院側はこれを見て、ワーファリン投与を中止はしたのですが、それだけで、この異常高値を下げるための処置をしませんでした。

協力医の意見では、PT-INRが7.9まで上がってしまうと、即座にこれを下げる積極的な処置を施さない限り、いつ出血してその血が止まらず、生命が危ぶまれる事態が生じても不思議はないとのことでした。

すなわち、新鮮凍結血漿及びビタミンKを投与して、PT-INRを急速に下げなければ危険な状態にあったわけです。

そうであるにも拘らず、病院はそのような措置をとることなく、やがて、恐れていた下血が生じ、止まらない血が日々流れていって、最後は出血性ショックで亡くなるのです。

すると、病院は、それまで一言も口にしなかったDさんの肺がん、胆のうがんを問題とし、それらのがんが末期にあったから、新鮮凍結血漿等を投与して、出血を抑えても無駄であったと主張し始めました。

Dさんにがんが見付かったことは否定できず、ただ、初期であったため、出血防止の救命措置が不要などとは到底いえません。

その結果、最後まで激しく争われ、裁判所からの提案で、専門委員の意見を聞くこととなりました。

出血防止措置に関する争点とがんの病期・進行度に関する争点とで、専門が別であったため、2人の医師が専門委員として選任され、意見聴取が行われました。

その結果、一人が原告寄りの意見を述べ、もう一人が被告寄りの意見を述べるという形となりました。

これにより、双方痛み分けとなり、450万円の和解として矛を収めたのです。

医療事業部 担当弁護士の解決結果に対するコメント

原告の請求額2000万円余りであったことからすると、金額的には、不満な要素もあったかもしれませんが、長期間訴訟審理の中で、思うところの主張をぶつけた末、450万円の支払いに応じさせたこと自体、病院にミスを認めさせたのだとの満足感が遺族には見られたように思います。

初め、裁判所から専門委員を入れる提案がなされた際、病院側弁護士は、専門委員の意見がどう出ても、鑑定でないと病院を説得できないとして反対していました。

しかし、結局、訴訟上の和解が成立しているところからすると、やはり、中立的な立場の医師であれば、鑑定だろうが専門委員だろうが、尊重される傾向があると感じた一件でした。


文責:弁護士法人ALG&Associates
医療事業部長

代表社員・弁護士 金﨑浩之

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