【解決事例】内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の際の胃穿孔による急性汎発性腹膜炎「3000万円で示談」

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解決事例.12 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の際の胃穿孔による急性汎発性腹膜炎

【事案の概要】

Fさんは、早期胃がんが発見されたことで、内視鏡による電気メスを用いるESDを受けました。

その際に、医師は、胃穿孔を生ぜしめたことにより、胃液等の腹腔内流失で、呼吸機能にも障害を与える急性汎発性腹膜炎を発症させ、死亡させてしまったのです。

ESDにおける胃穿孔の発生率は、約3%程度であり、しかも、その大半が術中のクリッピングや術後の胃の減圧、抗菌薬投与等の保存的療法で治癒されるものとされており、死亡例の報告は殆どない状況でした。

このため、遺族は、合併症による予測不可能な死であった旨の病院側の説明に納得せず、当方に示談交渉を委任することとなりました。

【解決のポイント】

協力医から匿名コメントを得ることができ、それによれば、そもそも、Eさんの胃がん病巣部は狭小であったことから、電気メスを用いるESDを避け、高周波電流を通したワイヤで病巣を切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)を選択すべきだったとのことでした。

解剖所見の中にも、「胃の前壁大弯側の潰瘍は、ESDによる胃切除相当の大きさであった」旨の記載がありました。

そして、仮に、ESDを選択した点の問題を問わないとしても、本件の手術ビデオを見る限り、穿孔は胃粘膜切除範囲に相当する大きさに及び、盲目的な操作による筋層全層の焼灼が主原因と分析できるものでした。

また、胃穿孔を発生させた過失に加え、手術直後から腹痛の訴えと200を超える血圧から、この異変を捉えて、医師は適切に応急の処置をしなければならなかったのに、鎮痛剤内服という対症療法を指示しかなされませんでした。

仮に、その段階でCT検査がなされていれば、腹腔内遊離ガス、液体貯留の検出も可能であり、X線撮影や血液検査がなされていれば、上記ガス・液体が一定量を超えた時点で、胃穿孔や腹膜炎の診断がなされていた蓋然性が極めて高かったのです。

その診断があれば、手術による穿孔部の閉鎖と腹腔内洗浄、腹腔ドレナージを実施した上、胃管による胃の減圧、補液、抗菌薬投与等により、患者を十分救命できたという事案でした。

それゆえ、ESDという手技選択上の過失、ESD作業中に胃穿孔を発生させたという手技上の過失、手術後の症状や検査により胃穿孔・腹膜炎を疑って対処すべき術後管理上の過失という3段階の過失を追及しました。

すると、病院側は、前2段階の過失は否定したものの、最後の術後管理上の過失を認めてきました。

これにより、3000万円で示談による解決を図ることができました。

医療事業部 担当弁護士の解決結果に対するコメント

この件は、早期に協力医の匿名コメントを得て、これを基に、病院側に文書を送ったことで、さほど労力的負担なくして高額の和解を成立させたよい例です。

訴訟に至らず、示談交渉のみで解決するなら、協力医の鑑定意見書は、匿名コメントでも何ら問題はないわけです。

協力医も、コメント作成にあたって、明確な医学的根拠を示す参考文献類を精査する手間が省け、自らの知識と経験のみで、その考えを書面にまとめれば足りることになります。

それゆえ、顕名の意見書の場合より、時間も短縮できます。

もっとも、本事案は、日本医師会医師賠償責任保険による対応であったため、最終的には、複数の医学関係学識経験者及び法学関係学識経験者で構成される賠償責任審査会の判断を経る必要がありました。

そこに、4、5か月の期間を要しました。

それでも、医療訴訟が一般民事訴訟の2、3倍の期間を要するとされていることからすれば、比較的高額な賠償による十分な短期解決であったと思います。


文責:弁護士法人ALG&Associates
医療事業部長

代表社員・弁護士 金﨑浩之

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