【具体例】帝王切開術後の出血性ショックと転送義務 | 医療事故 医療過誤 / 弁護士法人ALG&Associates

メニュー(タッチして展開)

帝王切開術後の出血性ショックと転送義務

帝王切開術後の出血性ショックと転送義務

帝王切開術とは

帝王切開術とは、急速遂娩の方法の1つであり、子宮壁を外科的に切開して胎児を娩出させる方法をいいます。

予定帝王切開(予め日時を定めて行う帝王切開術)の必須条件として、①母体が手術に耐えうること、②胎児が生存しており胎外生活が可能であることがありますが、胎児・胎盤の存在が母体の生命に危険を及ぼす場合には、胎児の生死を問わず母体の生命を優先させ、緊急帝王切開術を行うことになります。

いずれにせよ、帝王切開は開腹手術であり、経腟分娩より高いリスクを持っています。

術後の出血による出血性ショック

産科ショックの90%は出血による出血性ショックです。

また産科ショックは、急激に進行し、治療時期を逸すると不可逆的な状態に陥り救命が困難となる為、早期治療が大変重要です。

原則としては、ショック自体の治療とともに、基礎疾患の除去や止血を並行します。

また、抗ショック療法としては、気道を確保し酸素投与をまず行うとともに、乳酸リンゲル液の急速輸液を行い、併せて、電解質異常と酸塩基平衡の補正も行う。更に失血量と同量の輸血を行い、昇圧薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、ステロイド等を投与します。

なお、手術後に出血性ショックが疑われ、設備や態勢、その他の理由で、自院で適切な処置・治療を行うことができない場合には、速やかに、より高度な設備や態勢を備えた適切な医療機関に転送し、適切な医療を受けさせる義務が生じます(転送義務)。

従って、転送すべきか否かの判断の遅れによって適切な治療を行うことが遅れ、重大な結果が生じた場合には、転送義務違反に基づく責任が生じ得ます。

判例(東京地裁平成15年10月9日判決)

被害者は、帝王切開術の直後から、持続的にめまいや気分不快、体熱感、軽度の呼吸苦を訴え、術後約3時間後には、意識不明瞭及び脈拍が亢進し、術後約4時間後には、脈拍が140回/分にまで上昇し、出血性ショックを疑う状況にありました。

しかし被告病院では、適切な処置を行うことができない状況であった為、術後約4時間後の時点で、被告病院は救急病院へ転送すべき義務が生じていました。

にも関わらず、実際に転送の手配を始めたのは術後約4時間40分後、救急病院へ搬送依頼をしたのは約5時間後、実際に救急病院へ着いたのは5時間50分後でした。

本判決は、この転送手配の遅れにより、被害者は、全脳虚血後の遷延性意識障害と低酸素性脳症、いわゆる植物状態に至ったと認定しています。

但し、この事案では、被告病院が、責任があることを強くは争っていなかったことが推定される為、比較的、転送義務違反の過失や、過失と植物状態になったこととの因果関係を比較的容易に認めている印象があります。

従って、事案の内容や、被告病院が強く過失や因果関係を争うような場合には、同じような結論にならない可能性もあります。

妊娠具体例

微弱陣痛と陣痛促進剤の投与 胎児が骨盤位の場合の分娩と… 鉗子分娩の手技と医療過誤 常位胎盤早期剥離と胎児の死亡 羊水塞栓症を原因とするDICと… 帝王切開術後の出血性ショック… 出産後の問題である「核黄疸」

医療事故解決相談メニュー