説明義務違反と因果関係 / 弁護士法人ALG&Associates

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説明義務違反と因果関係

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医師の説明義務違反が肯定されたとしても、患者に生じた損害との関係で因果関係が認められなければ、原則として医師には、患者の損害について賠償すべき義務はありません。
因果関係が肯定されるためには、仮に医師が説明義務を尽くしていれば、患者の当該損害は生じなかったと評価できることが必要となります。
もっとも、患者の当該損害が100%生じなかったことを立証することは困難なので、判例上は、患者の損害が生じなかった高度の蓋然性を立証すればよいとされています。
高度の蓋然性とは、分かりやすく表現すれば、可能性が高かったこと(確率的に十中八、九と表現されることもあります)を意味しています。
要するに、医師が説明義務を尽くしていれば、十中八、九の確率で患者に当該損害は生じなかったと評価できる場合に、医師にその損害の賠償義務が生じるということになります。

もっとも、医師が説明義務を尽くしていた場合に、患者が実際どのような選択・意思決定を行ったかは仮定の話ですから必ずしも明らかにできない場合も多いというのが現実です。
そこで、説明義務違反と損害との間の因果関係については、次のとおり、3つのケースに分類して検討するのが分かりやすいと思われます。

  1. ① 仮に説明義務を尽くしていれば、患者の損害が生じなかった高度の蓋然性が認められる場合
  2. ② 仮に説明義務を尽くしていても、患者の損害が生じなかった高度の蓋然性までは認められないが、その可能性は否定できない場合
  3. ③ 仮に説明義務を尽くしていても、患者の意思決定は変わらず、当該損害が生じていたことが明らかである場合

まず、①の場合では因果関係が認められるので、説明義務を怠った医師が、患者に生じた損害について、その全額を賠償すべきなのは当然です。
逆に、③の場合には、因果関係がないことが明らかなので、このような場合に医師に賠償義務を負わせるのは筋が通りません。
問題は、割り切れない②のケースです。この場合、高度の蓋然性までは立証できていないわけですから、伝統的な因果関係論に基づけば、③と同様に医師に責任なしという結論になるはずです。

しかし、そうは言っても、②のケースで医師の責任を完全に否定してしまうことは、あまりにも患者に酷であり公平を失することから、このような場合には損害との間の因果関係を否定しつつも、患者の自己決定権を侵害するものとして自己決定権侵害に伴う慰謝料の限度で医療者に賠償責任を負わせるという法理が採用されるようになりました。
今日では、これが医療訴訟における裁判所の見解の趨勢であるといっても過言ではありません。
この法理に対しては、一部、弁護士などの専門家から、因果関係が否定されているのに医師に賠償責任を負わせるのは不合理であるという批判も少なくないようです。

しかしながら、そのような批判については、自己決定権侵害を根拠とする賠償責任における損害が何かを正確に理解されていないのではないかという疑問があります。
ここで問題とされている損害は、患者に現実に生じた損害、例えば、死亡や後遺障害などといった損害ではありません。
これらの損害との間における因果関係は否定されているのですから、これらの損害を賠償すべき義務が医師にないのは当然です。
しかし、ここで問題とされている損害は、死亡や後遺障害ではなく自己決定権です。医師が説明義務を怠っている以上、医師から必要な情報提供を得て自ら決定するという意味での自己決定権は侵害されているわけです。
したがって、自己決定権が侵害されたという損害と、説明義務違反との間には因果関係が認められることになります。
その結果、医師が賠償義務を負うのは、死亡や後遺障害などの損害についてではなく、自己決定権侵害に基づく慰謝料に限られるということになるわけです。

では、自己決定権侵害により生じる慰謝料とは、具体的にどのくらいの金額になるのかが次に問題となりますが、裁判例によってバラツキが大きいと言えます。
高額なものでは1000万円を超えた慰謝料の支払を命じた裁判例もありますが、そのようなものはむしろ例外で、30万円から300万円程度の範囲で慰謝料を認めたものが多いようです(大阪地判平成14年11月29日、東京地判平成16年1月26日、東京高判平成10年9月30日など多数)。

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