【必読】因果関係について | 医療事故 医療過誤 / 弁護士法人ALG&Associates

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因果関係について

因果関係について

医療ミス・医療事故に関する医療裁判においては、患者側のほうで、医師・医療機関の過失(注意義務違反とも言います)と因果関係を主張・立証しなければなりません。

過失は法律の素人である患者さんにとってイメージしやすいと思いますが、因果関係については耳慣れない言葉だと思います。

因果関係とは、患者さんが死亡したとか、あるいは重度の後遺障害が残ってしまった場合で、その死亡又は後遺障害という結果が、医師・医療機関の過失によって生じていることを意味します。

ということは、仮に医師・医療機関の過失を立証することができても、患者さんに生じた結果(死亡・後遺障害など)が別の原因で生じた可能性がある場合には、過失と結果との間の因果関係が認められないとして、医師・医療機関の賠償責任が否定される場合がある、ということになります。

ここで重要なのは、因果関係の存在は、あくまでも患者側である原告に立証責任がある点です。

ですので、医師・医療機関の過失により患者さんに重大な結果が生じた可能性もあるが、医師・医療機関の過失と無関係に結果が生じた可能性もあり、そのいずれであるのか明らかでない場合には、因果関係が否定され、医師・医療機関の責任も否定されてしまう点です。

そこで、医療機関側である被告が因果関係の存在を争ってくる場合に、医療機関側からよく主張されるものとして、いわゆる"他原因の主張"があります。これはどのような主張かというと、例えば、医者が癌を見落としてしまい、最終的に患者さんが死亡してしまったケースで、「確かに患者は死亡したが、癌で死亡したのではなく、肺炎で死亡した可能性がある。したがって、医師による癌の見落しが原因で患者が死亡したとは断言できない。」などというような内容の主張になります。

また、次のように争われる場合もあります。

例えば、上記と同様に癌の見落しのケースで、「確かに患者は癌で死亡したが、癌を見落とした時点で、すでに患者は末期状態であった可能性があるので、仮に医師が癌を見落とさず、直ちに適切な治療が開始されたとしても、やはり患者は死亡したはずである。したがって、医師による癌の見落しが原因で患者が死亡したとは断言できない。」などという内容の主張です。

この2つの主張は、因果関係を争う医療機関側からよく出される典型的な主張です。

しかしながら、医療の世界で、患者さんの死亡や後遺障害の発生が、確実に医師の過失によるものであることを立証することはけっこう難しいのです。

人のカラダの中で起こっていることを医学的に正確に知ることは、実は医師にとっても容易ではありません。

患者さんが癌であることが確実であっても、他の疾患が全くなかったとは言い切れません。

そもそも患者さんというのは、健康な人たちではなく、何らかの疾患を抱えている人たちなのです。

もしかしたら、癌以外の病気があったかもしれません。

また、ちゃんと癌が見つかれば100%治療に成功するなどということはなく、救命できるか否かは実際に治療を行ってみないと分からないケースも多いのです。

これは癌以外の病気も同様で、治癒率や救命率は必ずしも100%でないことのほうが多いので、このような場合にまで因果関係を否定してしまうと、過失がある医師は、容易に責任を免れることができることになります。

そこで、医療裁判における因果関係の立証の困難性を考慮して、裁判所は、因果関係の認定基準について、これまで様々な基準を確立してきました。

最初に出された有名な判例は、最高裁判決昭和50年10月24日の東大ルンバ-ル事件判決です。

この最高裁判例は、

「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性と証明することである」

としたうえで、

「その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる」

と判示しました。

その後、最高裁判決平成11年2月25日の肝がん見落し事件判決は、上記の東大ルンバール事件判決を踏まえたうえで、

「右は、医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の死亡との因果関係の存否の判断においても異なるところはなく、経験則に照らして統計資料その他の医学的知見に関するものを含む全証拠を総合的に検討し、医師の右不作為が患者の当該時点における死亡を招来したこと、換言すると、医師が注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば、患者がその死亡した時点においてなお生存したであろうことを是認しうる高度の蓋然性が証明されれば、医師の右不作為と患者の死亡との間の因果関係は肯定される」

と判示しました。

さらに、救命可能性は低いけれども、延命は十分期待できたという事案について、最高裁判決平成12年9月22日は、

「疾病のため死亡した患者の診療に当たった医師の医療行為が、その過失により、当時の医療水準にかなったものではなかった場合において、右医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、医療水準にかなった医療が行われていたならば、患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、医師は、患者に対し、不法行為による損害を賠償する責任を負う。」

と判示しました。

この最高裁判決は、救命はできなくても延命できる相当程度の可能性がある場合には、いわゆる期待権侵害として、慰謝料の賠償義務を認めたものです(逸失利益の賠償義務は認められません)。

このように、患者側による因果関係の立証を緩和したとも評価できる最高裁判決がいくつも出されています。

しかしながら、今日においても、医師・医療機関側が因果関係を争ってくることは大変多く、依然として医療裁判の重要な争点となっています。

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