【必読】医療過誤(医療事故・医療ミス)事件の流れ | 医療事故 医療過誤 / 弁護士法人ALG&Associates

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医療過誤(医療事故・医療ミス)事件の流れ

医療過誤(医療事故・医療ミス)事件の流れ

医療紛争の解決を弁護士に依頼すると、次のような手順で進んでいきます。

電話・メールによる問い合わせ→法律相談→証拠収集→協力医への依頼→過失調査結果の報告・方針決定→医療裁判等の手続き又は交渉

1.電話・メールでの問い合わせ

電話・メールでの問い合わせでは、弁護士法人の受付担当者が、事情聴取を行います。

主に、問い合わせをしてきた人が知っている範囲内で、できるだけ詳細に事案の概要を聴取ります。但し、

① 電話に出た受付担当者は弁護士ではありませんので、この段階で、原則として医療過誤か否かをお答えすることはありません。

② 医師や医療機関とのコミュニケーション・トラブルなど、明らかに医療過誤ではないと判断される場合、又は損害額が小さいため費用対効果が合わないと判断される場合には、法律相談をお断りすることがあります。

2.法律相談

受付担当者が事情聴取を行い、弁護士に確認した上で医療過誤の可能性があると判断された場合には、法律相談を行います。

法律相談は、医療チーム専属の弁護士が行います。

原則として、法律相談は法律事務所での面談で行います。

但し、遠隔地であるなど、法律事務所へのご来所が困難な相談者に対しては、電話による法律相談に応じます。

弁護士は、相談者から聴取した事案の概要を参考に医学文献で簡易調査を行い、法律相談の準備を行います。

法律相談の時点においては、証拠関係が揃っておりませんので、法律相談で医師・医療機関側の責任が明らかになるわけではありませんのでご注意ください。

法律相談では、あくまでも仮に医療機関側に責任が生じるとすれば、どこにポイントがあるのか等の抽象的な見通しにとどまります。

診療記録等、医学文献の精査を行うことなしに、具体的な見通しは医師でさえ判断できないということをまずご理解ください。

法律相談において、医療機関側に医療事故・医療ミスに対する責任が生じる可能性があると判断された場合には、相談者のご希望に従い、過失調査を受任致します。

ここで受任するのは、あくまでも証拠収集作業と協力医の助言を踏まえた過失等の検討にとどまります。

過失調査を実施したからといって、必ず医療裁判になることが保障されているわけではないことにご注意ください。

協力医と協議した結果、医師・医療機関に対する責任追及が困難だと判断した場合には、医療裁判の受任をお断りすることがあることをご理解ください。

法律相談の時点で、すでに相談者が医療機関側から診療記録等を入手済みの場合には、それらの資料をお預かりして、弁護士が協力医に過失調査を依頼します。

相談者による医療収集が終了していない場合には、依頼者との協議により、証拠保全手続きを行うか、又は依頼者ご自身によって資料収集していただくかを決定します。

3.証拠収集

① 証拠保全

証拠保全とは、裁判所を通じて診療記録等を入手する手続きです。

最大のメリットは、裁判所という公権力を通じて診療記録等を保全するため、証拠の収集方法としては最も優れた手段です。

メリットとしては、

①密行性が高く、カルテ改ざんの可能性が低くなること、

②公権力による証拠収集手続きなので、証拠収集の確実性が高まること、

③通常、弁護士を通じて実施されるため、必要な資料を漏れなく入手できる可能性が高いこと、

などが挙げられます。

デメリットとしては、費用がかかることです。

電子カルテがかなり普及しておりますが、紙カルテを使用している医療機関も依然として多く、その場合にはカルテ改ざんのリスクが高まりますので、原則として証拠保全手続きをお薦めしております。

また、何らかの理由により、医療機関が診療記録等の開示を拒否する可能性がある場合も同様に、証拠保全手続きをお薦めしております。

なお、医療機関に対する証拠保全手続きは、裁判所による強力な手続きですので、医療機関に対して、相当のストレスを与えるものです。

したがって、事案によっては、裁判所が証拠保全命令を出さない場合もありえますので、必ず保全執行できることを確約することはできません。

② 任意開示

裁判所による証拠保全手続きを利用しない場合には、当該医師・医療機関に対して、任意に診療記録等を開示してもらいます。

最大のメリットは、費用が安くすむことです(資料のコピー代は医療機関から請求されるため、無料で入手することは困難です)。

但し、いくつかのデメリットがあります。

ひとつは、裁判所による手続きではないため、医療機関が情報の開示を拒絶してくる場合があることです。

最近はかなりそのような事態は減少しましたが、依然として拒絶してくるケースはあります。

そのような場合、やむを得ず、証拠保全手続きに移行せざるを得ないことになりますが、証拠保全のメリットのひとつである密行性は失われます。

患者側の手の内がすでに明かされておりますので、証拠保全手続きに移行している間のカルテ改ざんリスクも相当程度高くなります。

2つ目のデメリットは、収集すべき資料に漏れが生じる場合です。

医療機関は、開示を求められた資料しか開示しませんので、開示される資料に漏れが生じてしまうことがよくあります。

特に、弁護士を通さずに、ご依頼者自身で開示請求している場合です。

よくあるのは、ご依頼者自身で開示請求を行ったところ、カルテしか入手できていないようなケースです。

カルテが重要な診療記録であることは間違いないのですが、カルテだけでは全く足りません。

このようなデメリットを避けるため、弁護士を通じて任意開示請求を行うこともあります。

弁護士を通すため、入手すべき資料に漏れが生じる危険性は低くなりますが、情報開示を拒絶される危険性は依然として残ります。

そのような場合、やはりカルテ改ざんの危険性は当然ですが高まります。

このような観点から、費用の問題がなければ、証拠保全を優先的に検討することをお薦めしております。

4.協力医への依頼

証拠保全又は任意開示によりカルテ等の診療記録を全て入手したら、協力医にそれらの診療記録の検討を依頼します。

協力医による検討が終了したら、弁護士と協力医との間で協議を行います。

そこで、弁護士は、協力医から問題のポイントや責任追及の可能性などに関する助言・意見を口頭又は書面で頂きます。

協力医によっては必ず面談できるとは限りません。

面談ができない場合には、弁護士は、電話・メール等を通じて協力医から助言・意見を頂くことになります。

なお、次の事項に十分ご理解ください(必ずお読みください)

  1. 人気がある協力医に依頼する場合には、順番待ちのため、診療記録等の検討に6ヶ月以上を要する場合があります。
  2. 協力医が近郊にお住まいとは限りません。
    協力医の所在地は、日本全国に分布しているため、その中から最もふさわしい協力医を選択することにしています。
    協力医が遠方にお住まいの場合には、弁護士が協力医と面談するための旅費(場合によっては宿泊費)が別途必要になる場合があります。
  3. 協力医との面談が1回で終了するとは限りません。
    また、メール等の通信手段で追加の質問を協力医に行う場合もあります。
    その場合には、別途費用がかかる場合があることにご注意ください。
  4. 協力医が必ずしも依頼者の期待する意見を述べてくれるとは限りません。
    協力医の意見が依頼者の期待に反するものであったとしても、弁護士費用・協力医への謝礼・旅費等の諸経費は一切返還できませんので、予めご了承ください。
  5. 協力医との協議面談については、ご依頼者は原則として同席できませんのでご了承ください。
    また、協議の時点で協力医の氏名・在籍する病院名等をご依頼者に開示することはできませんのでご了承下さい。
    あくまでも協力医の氏名等を開示できるのは、当該事案が医療過度の可能性ありと判断され、かつ、その協力医に顕名による意見書作成の意思がある場合に限られます。
    協力医とご依頼者の間のトラブル防止にご協力ください。

5.調査結果の報告と方針の決定

弁護士と協力医との協議が終了すると、その結果を依頼者に報告します。

結果の報告は、大きく分けると、①医療過誤である可能性があり、医療裁判を起こせば、勝訴の見込みがある場合と、②医療過誤ではない可能性が大きい、又は医療過誤の可能性があったとしても立証が困難であるなどの理由により、医療裁判は勧められない場合に分かれます。

調査結果の報告で、一旦は受任業務を終了します。

そして、①の場合は、依頼者が希望すれば、そこで正式に医療裁判・調停・交渉のいずれかの手続きに移行します。

その場合は、改めて弁護士が事件を受任することが必要となりますのでご注意ください(弁護士費用等は別途かかります)。

もっとも、医療紛争の場合は、調停又は交渉で解決することが極めて困難なので、基本的に医療裁判を起こすことを強くお薦めします。

②の場合は、基本的に医療裁判・調停・交渉などの次の手続きに移行することはお薦めできませんので、原則として、弁護士の受任業務は終了となります。

ところで、②の場合に、医療機関に責任追及できないことに強い不満を持たれる依頼者も少なからずおられますが、依頼者ご自身の利益のためですので、ご理解いただきたいと思います。

第1に、勝訴が困難な事案であっても、弁護士費用等が減額されるわけではないので、依頼者としては、弁護士費用・諸経費というコストを負担しながら、高い敗訴リスクを覚悟しなければならなくなります。

また、医療裁判は通常の裁判よりもはるかに時間もかかります。

かなりの費用・時間をかけて闘ったのに、最終的に敗訴となることは、実は依頼者自身にとって大きなマイナスとなるのです。

第2に、勝訴が困難な事案であるということが調査で判明したこと自体、依頼者にとって大きな利益なのです。

弁護士の中には、調査をまともに行わずに事件を受任し、訴訟や調停などの手続きにのせてしまう人がおりますが、お金と時間をかけたにもかかわらず、依頼者の希望に添える結果がでず、弁護士だけが得をするということになります。

受任すべきでない事件は受任しない、というのが弁護士として誠実な態度だと思います。

勝訴が困難であることが判明すれば、それ以上の手続きを行う必要はないので、無駄な費用と時間をかけずにすむわけです。

6.医療裁判・調停・交渉

① 医療裁判のメリット・デメリット

医療裁判の最大のメリットは、医療紛争を終局的に解決できる可能性が最も高い手続きである点です。理由は次のとおりです。

第1に、調停や交渉とは異なり、最後には裁判所に判決を求めることができます。

これは裁判による紛争解決の最大の特徴です。

勝訴するか敗訴するかはともかく、一応の結論は判決という形で示されるわけです。

但し、裁判で負けた方が控訴すれば、控訴審が始まりますので、そのような場合は裁判が継続することになります。

したがって、判決の場合、第一審で医療紛争を終局的に解決できるとは限らないことにご注意ください。

そして、医療裁判は、通常訴訟と比べると、判決が出た場合、敗訴した側が控訴(不服申立て)する可能性が高いという特徴があります。

第2に、訴訟上の和解による解決を期待できます。

調停や交渉では解決困難な医療紛争が、どうして訴訟上の和解を期待できるのかというと、医療機関側も判決で敗訴することを恐れるため、訴訟上の和解に限っては前向きに検討する傾向にあるからです。

実は、通常訴訟と比べると、医療裁判は、50%以上が訴訟上の和解により終了しており、判決までいくのは50%を下回るのです。

和解で終了した場合には、医療機関に控訴(不服申立て)されるということもなく、紛争は終局的に解決します。

いずれにせよ、判決であっても和解であっても、最終的には紛争は解決できます。

その意味では、いつまでも解決できない調停・交渉とは大きく違います。

次に、医療裁判のデメリットですが、最大のデメリットは、費用がかかる点です。

裁判手続きのための弁護士費用をはじめ、協力医の意見書作成に対する謝礼金、裁判で鑑定をお願いする時の費用、その他裁判所に支払う訴訟費用、弁護士が協力医と協議するために生じる旅費・交通費・日当など、裁判が終わるまでにはかなりの費用がかかります。

なお、解決するまでに要する時間の長さも裁判のデメリットとして指摘する弁護士もおりますが、私どもは、解決に要する時間の長さは、医療裁判の大きなデメリットとは考えていません。

というのは、医療ミス・医療事故に対する損害賠償額は一般的にかなり高額であることが多く、調停や交渉による解決に馴染まないのです。

それなのに、ムリに調停や交渉で解決しようとすると、やがて話し合いは暗礁に乗り上げて、妥協点を見いだせないまま時間のみが過ぎ去っていきます。

実際に、医療紛争の調停や交渉が1年以上、場合によっては2年以上かかり、それでも解決できればまだよいのですが、結局は調停も不成立、交渉も決裂で終わるというケースがたくさんあります。

要するに、裁判以上に時間がかかる調停や交渉はざらにあり、必ずしも裁判が最も時間がかかる手続きとは言い切れないわけです。

したがって、ALGでは、原則として、医療裁判手続きを利用することを依頼者の皆さんに勧めております。

② 交渉のメリット・デメリット

一般的に言われている交渉のメリットは、裁判と比べると、紛争を解決するのにかかる時間が短く、また費やす費用も少なくてすむ、という点です。

しかし、これは比較的損害額が少なく、被害者の被害感情がそれほど強くない事件に限られます。

私たちのこれまでの経験から言えることは、医療事故・医療ミスの紛争解決手段として、交渉は非常に不向きだと言えます。その理由は、以下の通りです。

第1に、医療事故・医療ミスにおける患者側の損害額は、一般的に数千万円に及ぶ高額なものであることが多く、そのような高額な損害賠償請求に対して、裁判もせずに医療機関側が応じてくることは極めて希であることを理解して下さい。

第2に、交渉では、裁判所による判決が出される可能性は皆無なので、基本的に交渉力は医療機関側のほうが圧倒的に優位にあると考えて下さい。

当然ですが、医療機関側にとって理想的な解決金はゼロ円であり、患者側の請求を拒絶すればこの理想額を達成できますが、患者側にとっては、請求額満額はもとより、その半額も回収するのも容易ではないのです。

交渉は、裁判ではないので、解決には常に医療機関側の同意が必要だからです。

第3に、私たちの経験だと、交渉は、場合によっては裁判以上に時間がかかる場合が頻繁にあります。

例えば、内容証明郵便で損害賠償の請求書を医療機関に送付すると、大概のケースでは、「院内で調査をし、追って回答する」などといった通知が来ます。

この"院内調査"を待っている期間だけで、半年以上かかる場合も少なくありません。

そして、半年後の医療機関側の弁護士からの回答は、「当病院には責任はないと判断しました」などといったものが多いのです。

ここから医学論争が始まるわけですが、患者側の主張に対する医療機関側の回答は、その都度2ヶ月から3ヶ月待たされたりするわけです。

このようなことをしているだけで優に1年を過ぎてしまいます。

医療機関側の戦術かもしれませんが、時間がかかる交渉では、基本的に損害賠償を請求している患者側の大きな譲歩が必要となります。

第4に、交渉でなかなか解決できないと、依頼者である患者さんは、ますます裁判をするのが嫌になり、交渉で解決したいと考えるようになります。

これまで交渉に費やした時間を無駄にはしたくないと考えるからです。

このような心理状況に陥ると、ますます交渉は不利になります。

患者さんが交渉による解決を強く望むため、結局大きく譲歩しなければならなくなるのは患者さんだからです。

これらの理由から、交渉で医療紛争を解決しようとすると、時間もかかり、かつ患者さんは解決のための大きな譲歩を求められ、最終的にはお見舞い金程度の金額で幕引きになるケースが少なくないのです。

交渉だけで高額な賠償額を回収できるのであれば、私たちのような患者側の弁護士も苦労しません。誰も医療裁判など起こさないでしょう。

したがって、多くの医療紛争では、裁判が最も有力な解決手段となります。

そして、交渉ではのらりくらりと対応した医療機関側も、裁判になると和解について真剣に検討するようになります。

なぜなら、和解が決裂すると、医療機関側も敗訴するリスクを覚悟しなければならなくなるからです。

したがって、いずれにしても交渉による解決はお薦めできません。

③ 調停のメリット・デメリット

調停は、当事者同士の話し合いという点では、本質的に交渉と同じです。

すなわち、交渉ですので、患者側と医療機関側が解決条件について合意することが絶対条件となります。

もっとも、調停には、交渉にはないメリットがいくつかあります。

第1に、当事者同士が話し合う交渉とは違って、中立的な裁判所が話し合いに関与しますので、通常の交渉よりは合意に達しやすいと言われています。

第2に、合意に達した場合には、裁判所が調停調書を作成しますので、万が一、医療機関側が合意内容に反して金員を支払わなかった場合には、強制執行が可能となります。

しかしながら、これらのメリットは、医療紛争を解決する手段としてはあまり大きくはなく、限界があると考えます。

まず第1に挙げたメリットですが、調停に直接関与するのは裁判官ではなく調停委員なのですが、この調停委員は医学の素人ですから、妥当な解決策をほとんど提示できません。

それどころか、患者側と医療機関側との間の医学論争をほとんど理解できません。

大都市圏の裁判所では、このような欠点を補うため、医師などの専門家を専門委員として配置して調停に関与させておりますが、私どもの経験では、医療機関側をかばう発言が目立ちます。

一応中立的な立場ではあるのですが、同業者をかばう傾向は否めず、患者側の視点に立って関与しているとは到底言えません。

次に、第2に挙げたメリットですが、このメリットは医療機関を相手方とする医療紛争ではあまり実益はないでしょう。

なぜなら、医療機関側の経済力を考えたら、調停が成立しているのに支払をしてこないという場合が想定できないからです。

調停調書が作成されることは、制度としては優れているのですが、出番はほとんどないと考えてください。

そうすると、交渉と比較して特筆すべきメリットがないことになりますが、交渉のデメリットはそのまま調停にも当てはまります。

すなわち、話し合いにおけるバーゲニングパワーは、医療機関側のほうが圧倒的に大きく、訴訟と同様に時間もかかります。

判決が出ないので、調停による解決には、医療機関側の同意が必要です。

調停が不成立に終われば、結局、裁判を起こすしか方法がなくなります。

既に別の弁護士さんにお願いして調停を行っている人で、全く解決できそうな兆しがないため、弁護士を替えたいと相談に来られる方がおります。

しかしながら、そのような案件は、基本的にお断りしております。

医療紛争に対する調停の解決能力の低さを考えると、弁護士が交替したからといって解決に向かうとは到底思えないからです。

「調停を直ちに不調とし、裁判を起こすのであれば検討に値します」と回答すると、大概の相談者は、そのまま同じ弁護士で調停を継続することを選択します。

やはり、これまで調停にかけた時間や費用を無駄にしたくないのだと思います。

こうして、いつまでも抜け出せない調停を何らの見通しも立たないまま漫然と継続していくことになるのです。

調停に馴染む医療紛争は、損害額が比較的小さい美容外科系や歯科系など 一部の分野に限られます。

7.医療裁判・交渉・調停はどのように進行するのか

医療裁判

医療裁判は、患者側である原告が訴訟提起することによって始まります。

訴状が原告から裁判所に提出されると、その1週間後くらいまでに裁判所から原告代理人弁護士に連絡が来て、第1回口頭弁論期日を決める協議が行われます。

第1回口頭弁論期日は、多くの場合、裁判所から連絡が来てから1ヶ月半ないし2ヶ月先の期日になります。

第1回期日が決定されると、裁判所が訴状を被告である医師・医療機関に送達します。

訴訟前に交渉等をしていて、その際に医療機関側に弁護士がついていたとしても、訴状の送達先は、被告である医師・医療機関となります。

第1回口頭弁論期日までに、被告である医療機関側は答弁書を裁判所に提出することになりますが、被告は、第1回口頭弁論を欠席する権利を有しています。

というのは、第1回口頭弁論期日は、被告の都合を聞かずに、裁判所と原告の都合の良い日が設定されているからです。

多くの場合、実際に被告は第1回口頭弁論期日を欠席しています。

もちろん、第2回口頭弁論期日以降は、被告も出席しなければなりません。

通常は、第1回口頭弁論期日に提出される答弁書、又は第2回口頭弁論期日で退出される準備書面で、被告は、原告の主張に対する詳細な反論をしてきます。

被告が第2回口頭弁論期日で詳細な反論を行うと、その次の期日である第3回口頭弁論期日で原告が主張・反論する準備書面を裁判所に提出します。

そうすると、その次の期日である第4回口頭弁論期日では、被告が反論してきます。

このような要領で第5回口頭弁論期日以降も、患者側と医療機関側が交替に互いの主張・反論を闘わせていくことになります。

通常の裁判では、期日は月1回のペースで入るのですが、医療訴訟の場合は、1ヶ月半又は2ヶ月に1回のペースだと思ってください。

原告も被告も次回期日の準備にけっこう時間がかかるためです。

そして、医療裁判の最大の特徴は、このように口頭弁論期日を重ねる度に、証拠として提出される医学文献が増えていく点です。

多くの場合、医療裁判では、医学文献の応酬による医学論争になると考えてよいでしょう。

このような主張・反論を繰り返し、お互いの主張が出尽くしたところで争点整理を行い、証拠調べを行います。

証拠調べでは、原告側が証人請求した協力医に対する尋問や、被告である医師に対する尋問などが実施されます。

ケースによっては、患者さんやその遺族が証言する場合もあります。

証拠調べが終わったあと、裁判所によっては、裁判所が選任した医師による鑑定が実施される場合があります。

もちろん鑑定医には、中立的な医師が就任します。

そして、鑑定医の意見も踏まえ、原告と被告から提出された全証拠を検討し、裁判所は判決を下すことになります。

これは、訴訟上の和解が成立せずに判決言渡しまで行った場合の医療裁判の流れですが、医療裁判の平均審理期間は2年ないし2年半と言われています(これでも大都市圏の地方裁判所に“医療集中部”が設置されたお陰で、だいぶ短くなりました)。

しかし、実際には医療裁判の5割以上は訴訟上の和解で終結しております。

交渉

交渉には、進行に関するルールは全くありません。

交渉がどのように進行していくかは、専ら当事者次第です。

医療紛争では、多くの場合、患者側にも医療機関側にも弁護士がつくので、弁護士同士の交渉となります。

交渉は、まず患者側の弁護士が医療機関側に対して、医療過誤であることを前提に、損害賠償を書面(通常は内容証明付郵便で送られます)で請求することから始まります。

損害賠償を請求する通知が医療機関側に送られると、医療機関側に弁護士がついて、その弁護士から回答が来ます。

通常、最初に医療機関側の弁護士から来る回答は、「院内で調査を行う」というものが多いです。

院内調査で半年以上待たされる場合もあります。

当然ですが、その間、交渉案件は塩漬け状態となります。

しばらくして、医療機関側から正式な回答が来ますが、医療機関側が過失を認めた上で具体的な金額提示をしてくることは極めて希で、通常は、医療機関側に責任はないという回答がほとんどです。

この時の回答で、医療機関側に責任がないとする具体的な医学的根拠が述べられているケースもありますが、ほとんどその根拠を述べていない回答書もあります。

医療機関側の回答が医学的根拠を述べる内容であれば、患者側の弁護士がこれに反論するという形で医学論争が始まります。

しかし、残念ながら、医学論争の結果、医療機関側が見解を変えてくることはまずありません。

ほとんどのケースで議論は平行線となります。

交渉で医療紛争が解決するケースの多くは、医療機関側に責任がないことを前提に、医療機関側がお見舞い金(通常は少額にとどまります)を患者側に支払う意思があり、かつ患者側がこれに納得できる場合です。

医療機関側も紛争を解決したいと考えているので、お見舞い金を支払うケースはよくあります。

しかしながら、患者が死亡又は重篤な後遺障害を残した場合で、高額な賠償金が支払われて解決するということは、ほとんどないと考えてください。

調停

調停は、患者側の弁護士が、医療機関側を相手方として、裁判所に調停申立書を提出することによって開始します。

調停の進行は、裁判所が関与することから、月1回程度のペースで調停期日が入ります。

調停は、裁判所が関与するとはいえ、基本的には"話し合いの場"なのですが、医療紛争の場合は、調停でも申立人である患者側と相手方である医療機関側との間における医学論争に終始することが多いです。

訴訟と違って、調停では、当事者も出席することが原則となっております。

調停の席に同席し、当事者の話し合いに関与してくれるのは裁判官ではなく、調停委員と呼ばれる人たちです。

調停の進行は、まず30分程度、調停委員が患者側である申立人の言い分を聴き、その間、医療機関側は待合室で待機します。

それが終わると、同じく30分程度、医療機関側である相手方の言い分を聴き、その間、患者側は待合室で待機します。

これを何クールか繰り返し、1日の調停は終わります。

1回の調停で話しがまとまることはほとんどないので、次回期日が設けられることになります。

待合室での待機時間も合わせると、ほとんど1日がかりの仕事となります。

各事件を担当する調停委員は2名ですが、1名は弁護士であることが多いようです。

もうひとりの調停委員は、弁護士でもなければ医療の専門家でもありません。

もっとも、大規模な地裁の調停では、裁判所が選任した医師が専門委員として関与してくれる場合があります。

しかし、医師資格を有する専門委員が調停に関与してくれたからといって、医療過誤であることを明言してくれることなど通常は考えられませんので、あまり多くを期待してはなりません。

専門的で高度な医学論争の助けになる程度と理解してください。

医師が専門委員として関与しない場合は最悪で、調停委員は、申立人と相手方の医学論争をほとんど理解できないと思ってください。

無事、調停がまとまれば、裁判所が調停調書を作成してくれます。

調停調書は、当事者間の合意書とは異なり、相手が調停で決められた金額を支払わなかった場合、強制執行できるという利点があります。

しかし、医療機関側が調停で合意した金額を支払ってこない事態などまず起こらないと考えてよいでしょう。

調停による話し合いがまとまらなかった場合、裁判所が不調(調停不成立)の調書を作成するか、申立人が調停の申立てを取り下げることによって、調停手続きは終了します。

医療事故・医療ミスの法律相談を受ける前に

弁護士に相談する前に、やっておくべきこと・やってはいけないこと 医療に強い弁護士の探し方(とても大事なので、しっかりお読みください) 医師免許を持っている弁護士について 他の法律事務所と何がちがうの? 医療事故・医療ミスを扱う弁護士の団体がいろいろあるようだが…? 医療事故・医療ミスの種類について いつの時点で弁護士に相談するべきか? 医療法律相談を受ける際にお願いしたいこと 医療法律相談はいくらかかるのか? 協力医とは? 意見書(私的鑑定意見書)とは 因果関係について 医療法律相談の流れ 医療過誤事件の流れ

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