【相談事例】絞扼性イレウスに対する開腹手術の遅れ | 医療事故 医療過誤 / 弁護士法人ALG&Associates

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相談事例.2 絞扼性イレウスに対する開腹手術の遅れ

〔相談内容〕

夫が自宅で突然腹痛を訴え、嘔吐を繰り返したことから救急車で病院に運ばれました。

その時、腹部のレントゲン写真を撮られるなどの検査が行われ、絞扼性イレウスという病気の疑いがあるということで、緊急入院となりました。

その後、絞扼性イレウスの可能性が高いという説明を医師から受け、このまま放置すると夫が死亡する可能性もあるということで、緊急開腹手術を行うということになったのです。

そして、開腹手術をしたところ、絞扼性イレウスであったことが分かり、既に腸の一部が壊死していたのでそれを切除したということでした。

手術自体は問題なく無事に終了したという説明を受けていたので安心していました。

ところが、翌日になって容態が急変し、翌々日に夫は急死してしまいました。

手術自体も成功し安心していたので、その2日後に夫が死亡してしまったことに頭が混乱し、何が起こったのか理解できません。

医療ミスの疑いを拭いきれませんので、調べていただきたいと思います。

〔弁護士の回答〕

イレウスという病気は、簡単に言うと、腸の通過障害を指す病気なのですが、そのうち、血行障害が生じているものを絞扼性イレウスと言います。

わかりやすい例を挙げると、お腹の中で腸が捻れてしまった場合、捻れているために腸の内容物が通過できなくなっていると同時に、捻れによって血行障害も生じているわけです。

そして、血行障害が生じると、その部分の腸に血流が行かない、つまり酸素不足の状態を招き、壊死といって、その腸の細胞が死んでしまいます。

すると、バクテリアル・トランスロケーションというのですが、腸内の細菌が腸から出ていき、血流に乗って全身に細菌がばらまかれ、敗血症という病気に進展していきます。

少々難しい話しになりますが、敗血症になると、DICと言って大量の微小血栓が血管内に発生して、様々な臓器への血流を妨げ多臓器不全を招いたり、肺水腫を原因とするARDS、つまり急性の呼吸不全を招いたりして、死に至る危険が高くなります。

本件では、診療記録が手元にないので確実なことは言えませんが、ご主人の場合も最終的には敗血症に進展して、DIC又はARDSなどを合併して死亡されたのではないかと推察します。

絞扼性イレウスの患者さんを救命する方法は、唯一、開腹手術を実施して、腸の絞扼を解除し、血流を速やかに再開することに尽きます。

腸管が壊死する前に絞扼を解除できれば、それだけで救命できるそうです。

逆に、開腹手術をしなければ死亡することは避けられないでしょうし、仮に開腹手術を行ってもそれが遅すぎて手遅れとなる場合もあります。

本件では、最終的に開腹手術を実施しているようですが、腸管の一部が壊死していたということですから、すでにバクテリアル・トランスロケーションが起こり敗血症に進展していたのかもしれません。

そうすると、本件では、もう少し早い時点で開腹手術に踏み切ることができなかったのか否かが重要なポイントになると思います。

腹部のレントゲンは撮影しているようですが、これだけでは絞扼性イレウスの確定診断は難しい場合が多いようです。

腹部レントゲンでも、イレウス所見を取ることは比較的容易ですが、それが血行障害を伴う絞扼性イレウスなのか、それとも血行障害を伴わない単純性イレウスなのか、決め手を欠く場合も多いそうなのです。

そのため、場合によっては、絞扼性イレウスの確定診断に至らなくても、疑いのレベルで緊急開腹手術を施行する場合もあるそうです。

ただ、造影CTを撮ると、絞扼性イレウスの確定診断に迫れるとも言われています。

本件では、造影CTが実施されているかどうかわかりませんので、この点も診療記録等で調べる必要があると思います。

〔転帰〕

カルテ等を入手して精査したところ、造影CTは施行されていなかったことが判明した。

協力医によると、絞扼性イレウスを否定できなければ造影CTを撮るのは常識ということであり、造影CTを施行していればもっと早い段階で確定診断に至り、開腹手術に移行できたはずだということであった。

本件は、その後提訴し、4000万円の高額和解で終結した。

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