【相談事例】敗血症の見落し「呼吸困難に陥って危篤状態」 | 医療事故 医療過誤 / 弁護士法人ALG&Associates

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相談事例.4 敗血症の見落し「呼吸困難に陥って危篤状態」

〔相談内容〕

妻がひどい高熱のため市立病院を受診したところ、インフルエンザと診断されました。

薬を処方され一旦は帰宅しましたが、病状が全く改善せず、2日後に入院となりました。

ところが、入院後も妻の熱はあまり下がらず、病状もあまり改善しない日々が続き、入院してから4日後に容態が急変し、呼吸困難に陥って危篤状態となりました。

そして、入院から6日後、妻は急死してしまったのです。

主治医は、妻の死因についてインフルエンザであると説明するのですが、なぜインフルエンザ程度で急死してしまうのか納得できませんでした。

そこで、不本意ではありましたが、あえて妻の解剖をお願いしたのです。

なぜ突然このようなことになったのか、真相を知りたかったからです。

そして、妻の遺体を解剖した結果、妻が死亡した本当の原因はインフルエンザではなく、細菌感染を原因とする敗血症という病気であったことが分かったのです。

妻が敗血症に罹っているなどという話しは、これまでに主治医の先生からも全くなされておりません。

この病院の医師の診断に問題がなかったのか調べて欲しいと思います。

〔弁護士の回答〕

この事件でまず申し上げておきたいのは、病理解剖を選択したことは最善の選択であったという点です。

ほとんどの医療紛争では、病理解剖がなされておらず、裁判で死因自体が争われることも珍しくありません。

死亡診断書に死因が記載されていても、裁判になると別の死因が可能性として指摘され争われることもよくあります。

もちろん、病理解剖していないと医師の過失を絶対に明らかにできないというわけではなく、臨床経過等から合理的に死因を特定し、そこから医師の過失を考えていくこともできるのですが、本件の場合、奥様は手術を受けていたわけではないので術後感染もありえず、また、カテーテル留置の事実もありませんから、敗血症まで辿り着けたか疑問です。

ということで、病理解剖を行うという決断は素晴らしいと思います。なかなかできることではありません。

それでは、奥様の死亡原因となった敗血症という病気について説明したいと思います。

敗血症とは、感染症による全身性炎症反応症候群と定義されていますが、簡単に言うと、細菌などの微生物が血中に侵入し、体全身に原因微生物がばらまかれると、全身が炎症反応を起こすのです。

要するに、体の免疫機構が侵入した微生物と闘うために炎症反応が起こるのですが、血流を通じて感染が全身に及んでいるために、炎症反応も局所的にではなく、全身性に起こるわけです。

この敗血症が重症化すると、DICと言って、血管内に大量の微小血栓が出現し、これが循環動態を悪化させ、多臓器不全を引き起こすことがあります。

また、血管透過性も亢進し、肺水腫、つまり肺が水浸しの状態になり、その結果、ARDSを発症させることもあります。

ARDSとは、急性呼吸窮迫症候群の略ですが、分かりやすく言うと、急性の呼吸困難です。

敗血症は、早期に診断し治療を開始すれば、決して助けられない病気ではないのですが、治療が遅れると重症化し、敗血症性ショックに陥ります。

敗血症性ショックに陥ると、死亡率は50%にも及ぶとする報告もあるそうです。

なので、如何にして敗血症を早期に診断して速やかに治療を開始できるかどうかがポイントになります。

奥様のケースでは病理解剖するまで医師は敗血症に全く気づいていなかった様子ですので、熱や呼吸数などのバイタルサインや白血球数等を分析して、敗血症と診断することが可能であったかどうかを詳しく調べる必要があります。

その結果、敗血症を十分疑える所見が見つけられれば、医師の過失を問題とする余地が出てくるでしょう。

〔転帰〕

医療調査の結果、いわゆるSIRS基準を満たす所見が確認でき、敗血症見落しの過失を問題にできるというのが協力医の意見であった。

本件は剖検記録もあり、敗血症で患者が死亡したことは明らかだったので、訴訟を選択せず、医療機関との示談交渉による解決を目指した。

1年を要した交渉は決裂し、最終的に訴訟で2500万円の和解が成立した。

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